1612 MHz OH Survey of IRAS Point Sources I.Observations


te Lintel, Caswell, Habing, Haynes, Norris
1991 AASup 90, 327 - 353




 アブストラクト

 2703 IRAS 天体を 1612 MHz OH ラインで観測した。738 個で 検出し、うち 597 個が新発見であった。観測天体の選択は 12-25-60 μm カラーで行った。log(f25/f12) > -0.2, log(f60/f25) < 0.6, f12 > 3 Jy, δ < -10° の天体の 70 % が観測された。大部分の 検出天体で、OH ラインのプロファイルは二本のピークを持ち、膨張星周 シェルからの放射である事を示している。サーベイの検出統計を論じた。 OH/IR 天体の詳細な議論は続編に書く。

 1.イントロ 

OH/IR 星の性質 
 OH/IR 星の光度は 2000 - 15,000 Lo である。Baud et al 1981 は OH/IR 星が CO の l-v 図と対応して、銀河系力学のよいプローブになることを 示した。実際、それらは銀河全体を通して観測できる唯一の恒星種族で ある。統計解析から質量は 1 - 8 Mo とされた。この天体は惑星状星雲 の母天体と看做されている。

 IRAS OH/IR 星 
 Olnon et al 1984 は OH/IR 天体が IRAS 二色図上で特定の箇所を 占めていると指摘した。ここでは北天のパイロットサーベイと南天の より詳細な観測結果を述べる。



 2.観測 

 2.Dwingeloo, Effelsberg での候補天体の選択 

 表1に観測パラメターをまとめた。Olnon et al 1984 で OH/IR 星の 二色図上の範囲が決められたが、その外では本当にないかを、 Dwingeloo, Effelsberg で確認した。そこで、f25/f12, f60/f25 カラー温度が 100 K を越す天体を選んだ。

表1.観測パラメター

 3.最終観測候補の選択  

 3.1.パイロットサーベイの結果  

 図1にパイロットサーベイで OH 検出と非検出の二色図を示す。この 結果は Olnon et al 1988 と似ている。図からは OH 検出天体は 限られた領域に集中していることがわかる。さらに、検出率 30 % と 高い領域は小領域である。  Effelsberg の パイロットサーベイ結果はパークス観測と合わせて表 2−5にまとめてある。Dwingeloo は質が悪いので載せない。

 3.2.パークスサーベイの結果  

 選択基準 
 選択基準は以下の通りである。
     log(f25/f12) > -0.35
     log(f60/f12) < 0.6
     2.571×log(f25/f12) -0.3 > log(f60/f12)

 第3基準は下と同じである。
     1.571×log(f25/f12) -0.3 > log(f60/f12)

f12, f25 のクオリティは 2, 3 としたが、 f25 は 1 も認めた。


図1a.OH なし
 赤い天体に集中 
 観測の目的は f12 リミッティッドのサーベイを行うこと である。パイロットサーベイから
     log(f25/f12) < -0.2
の天体では非常に明るい天体でのみ OH が検出される事が判った。そこで、
     log(f25/f12) > -0.2
の天体に観測を集中させた。その結果、f12 > 3 Jy, &dec; < 10° の天体では 70 % の天体を観測できた。

 738 天体で OH を検出 
 初めのカラー選択基準にあう 6552 IRAS 天体の内 2703 天体を観測し、 738 天体で OH を検出した。log(f25/f12) > -0.2 に限ると、総数 2227 個を観測した。&dec; < -10° の天体は 1903 個 あるが、うち 1655 個が f12 > 3 Jy である。

 より高温、低温の観測 
 我々が選んだ基準より高温の天体は Sivagnam et al 1988, 1989 が観測した。 より低温の惑星状星雲や post-AGB 天体は Likkel 1989, te Lintel 1991 が 観測した。



図1b.OH あり





図6.OH 源の分布。

 4.データ整約と結果 

 表と図の説明 
 表2は OH 検出の 700 天体を載せた。図2(マイクロフィッシュ) はそのラインが載っている。表3(マイクロフィッシュ)は OH 非検出 1942 天体の表である。表4には特異な結果を示した 30 天体を載せた。 それらのラインを図4に示した。表6には OH が吸収で受かった 81 IRAS 位置を示した。その意味は不明である。表7の 4 IRAS 天体は初め ラインが一本しかなかったが後で2本になった例である。

 4.1.位置分布と速度分布 



 分布 
 図6には OH 源の分布を示す。北天側が抜けていることに注意。でも案外あるな。 図7には l-v 図を描いた。図8には膨張速度の分布をプロットした。既知の OH 源に較べると低膨張速度天体が多い。

 ピーク強度比 
 球対称膨張シェルならば、近い側と遠い側でピーク強度が同じはずである。 図9ではその両者を比較した。強度比が 5 を越す天体数は 5 % 以下である。 しかし、青側ピークの方が 368 対 307 でやや多いようである。


図8.ピーク強度比



図7.l-v 図


図9.膨張速度の分布



 4.2.完全性限界 

 図10は OH ラインの中で最強のインテンシティ分布を示す。分解能が 1 km/s であるので、分解能が高まると 30 % くらい上がる可能性はある。 90 % の天体はピーク強度が 4 Jy 以下である。図11に f12 の関数として 検出数/観測数 をプロットした。2.5 Jy までは 検出率はほぼ 30 % で一定であるがそこで急落する。これは、フラックス 限界のサーベイが 3 Jy まではほぼ完全であることを示す。

 4.3.混同と位置不安定性 

 12.5' のパークスビームでは混同が避けられない。ただその評価は困難である。 IRAS 天体と OH 源との同定は少し疑いつつ見る必要がある。

図11a.f12 の関数としての 検出数と観測数の変化


図10.OH ラインの中で最強のインテンシティ分布


図11b.f12 の関数としての 検出数/観測数 比の変化



 5.検出率 

 図12にはパークスサーベイの検出率を二色図上に等高線で描いた。 明らかに、カラーによる選択は有効であるばかりでなく、効率的でもある。 観測の初めから、検出率が銀経と銀緯に依存する事が判った。検出率は |l| > 60°、 |b| > 5° で急落する。円盤領域で 40 % なのが、 外円盤で 10 % となる。これは数多くの非検出が太陽近傍に存在することを 意味する。非検出の解析は次の論文で論じる。


 6.結論 

 IRAS カラーで選んだ天体の OH サーベイを行い 738/2703 検出を得た。 検出の 95 % は二本のラインを持つ。一本天体は post-AGB の性質を 持つようだ。











図12a.OH 検出天体の二色図

図12c.検出率等高線。7.5, 12, 30, 40 %



図12b.OH 非検出天体の二色図



 表2.1612 MHz OH 検出 IRAS 天体リスト.標準的ダブルピーク天体のみ。  
















 表4.スぺクトルの形が3本以上、かつ、又は非標準的形状の天体  





 表5.一意には随伴 OH 源が決められないIRAS 天体  





 表6.OH 吸収のIRAS 天体  





 表7.一本ラインとして表2に載せたが、その後第2ピークが発見のIRAS 天体